子どもに人気の味

 「子ども達に人気があるメニューは何でしょう?」と聞かれたら、あなたはまず何が思い浮かびますか?

 以前の私は「やっぱり子どもが好きな食べ物と言ったら、ケチャップ味や甘いカレーライスかな?」なんて思っていました。しかし、その後に保育園で働く事になり、実際に子ども達の食べっぷりを見て驚きました。

 なんと一番人気だったのは「きゅうりとキャベツの塩もみ」という、何とも渋めでシンプルな味付けのメニューだったのです。

(きゅうりとキャベツの塩もみ:千切りキャベツと輪切りのきゅうりを塩もみして水気を絞っただけの簡単なもの)

 もちろん多少の個人差はあれど、いつもおかわり分までほとんど空っぽになって給食室に帰ってきていました。子どもは大人よりも味覚が敏感。そこで「手間をかければかけるほど、美味しくなる。」というのは場合によっては間違いなんだとハッとしました。

料理の美味しさとは?

 ひじきの煮物の味と言ったら醤油とみりんの甘辛味の印象が強い。その中に「ひじきの味」は、感じられるでしょうか?料理教室でひじきの煮物の塩分を少し控えめにすると「ひじきの味」がして美味しい!と皆さん驚かれます。

 もし今、あなたが常陸牛を手に入れたら、いつもの焼肉のたれで食べるより、わさび塩なんかでシンプルに頂こうかしらと思いませんか?「調味料の味で食べる料理」よりも「きゅうりとキャベツの塩もみ」の様な「素材の味を活かした料理」の方が美味しさを味わえる料理なのだと思います。

 そう考えると、日々の食卓において一品は塩味で、もう一品は醤油味で、もう一品はみそ味で…と様々な工夫を凝らす方も居ると思いますし、実際に私も「主菜が醤油風だから汁物はみそ汁にしよう」と決める事もあります。ですがそれ以前に、食材が違えば味は変わるので味付けが被っていても別に良いのです。「本物の美味しい料理=食材の魅力を活かした料理」を作ろうと思うと、実は簡単で良いんだと気付かされます。

 幸い、茨城県は魅力的な食材の宝庫。しかも新鮮で、さらにはお手頃価格で手に入るという都内の方々からすると羨ましいくらいの環境です。せっかく魅力的な環境下だから「料理」以前に「食材」を味わうという感覚で、毎日のお料理を気楽にしてみるのもいかがでしょうか?

 「今日は何が食べたい?」と聞かれると、「ハンバーグ」「カレーライス」「餃子」などメニュー名が思い浮かぶものしか返せません。「鶏肉と蓮根と冷蔵庫に残っている椎茸を炊いたやつ」なんて、名も無い現実的なメニューは食べる側からは出てきません。本当はメニュー名もどうでもいいんです。

調味料との付き合い方

メインはあくまで食材、味付けはその良さを引き出す洋服みたいなもの。

洋服にはTPO・気温によって適当な服があって、何でも着ればおしゃれという訳ではないのと同じく、調味料も使うタイミング・量が重要です。

新鮮で美味しいステーキ肉に塩胡椒を振ってからしばらく置いてしまうと、旨味や水分がたくさん抜けてしまいます。そのため、加熱直前に塩胡椒を振る。逆に生臭い魚には前もって塩を振って置いておく事で、臭みを水分と共に抜いたりもします。

つまり「塩分を上手く使う事」が「素材を美味しく味わう事」に繋がります。

「味が薄いと美味しくない」「味が濃くないと美味しくない」も納得。何でもかんでも塩分を減らすと確かに物足りなく、美味しくなくなってしまう。

しかし、きちんと使う部分には塩分を使って、余分な部分の塩分は減らすというやり方をマスターすることで素材の魅力を最大限活かした本物の「美味しさ」に辿り着けるのです。

まずは調味料を計って使ってみよう

以前、実験でフライパンに油を入れる際のカロリー差を計ってみた事があります。

1.小さじ(5cc)で計った場合
2.大さじ(15cc)で計った場合
3.容器から直接適当にチャッと入れた場合

結果は、

1.小さじで計った場合4g=36kcal
2.大さじで計った場合12g=107kcal
3.容器から直接適当にチャッと入れた場合:16g=143kcal

油はカロリーが多いので数値も大きく見えますが、実は塩分もこれと同じ。

「ちょっと濃いめになってしまった」は他のメニューを味気なくさせてしまったり、食材そのものの味が埋もれてしまったりと残念な要因になります。またそれを繰り返すと結構な塵も積もれば山となり、塩分も知らず知らずのうちに摂り過ぎてしまいます。

食材の美味しさを活かす為に、まずは調味料を計って使う事から始めましょう。

一回味わって頂きたい!簡単なのに美味しいワンプレート

 今回はそんな食材の旨味を活かした、簡単に作れるワンプレートメニューをご紹介させて頂きます。ワンプレートで済むので洗い物もラク!動画にて詳しい作り方をご覧頂けます。こんなにシンプルで本当に美味しいの?と思った方も是非一度、作って味わってみて下さい。

<分量(2人前)>(一人当たり579kcal、食塩相当量2.6g)

・ご飯 150g×2人分

・ガーリックチキンステーキ

鶏もも肉 1枚(300g)
塩 小1/2(3.0g)
胡椒 少々
にんにく 1かけ
玉ねぎ 1/4個(50g)
小ねぎ 適宜

・きゅうりとキャベツの塩もみ

きゅうり 1本(100g)
キャベツ 2枚(100g)
塩 小1/3(2.0g)

・冷やしトマト

トマト 2個

<作り方>

①トマトはヘタを取り除いてくし切りにして、冷やしておく。きゅうりは薄い輪切り・キャベツは5mm幅の細切りにしてボールに入れる。にんにくは薄くスライス、玉ねぎは薄いくし切り、小ねぎは小口切りにする。

②きゅうり、キャベツに塩 小さじ1/3(2.0g)を加えてよく揉み込み、10分程置いたらしっかりと水気を絞る。

③鶏もも肉に塩 小さじ1/2(3.0g)、胡椒 少々をよく揉み込む。

④フライパンを中火で温め、③を皮面が下になるように入れる。

⑤こんがりと焼けたらひっくり返し、にんにくも加えフタをし、中火弱に火を落とす。

⑥火が通ったら鶏肉は取り出しておく。

⑦空いたフライパンに玉ねぎを加え、中火に戻し、玉ねぎがしんなりするまで炒める。

⑧トマト、塩もみ、ご飯、切り分けた鶏肉を皿に盛り付け、鶏肉に⑦を乗せ、小ねぎを飾る。



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