健康の為に「増やす」

「生活習慣病の予防」となると、「減らす」ことが多く取り上げられ、何だか窮屈な気持ちになってしまう事があります。ダイエットでも「いくら食べてもOK!」という食べ物はないのだろうか…と考えた事がある方も少なくないはず。今回は、減塩したい時に「減らす」のではなく積極的に「増やしたい」カリウムについてご紹介します。

カリウムとは?

カリウムは食塩の素になるナトリウムと一緒に体内の浸透圧に大きく関わっており、よくナトリウムと対で扱われます。浸透圧、つまり体内の水分調節に関わってむくみや血圧に影響を与え、ナトリウムを多く摂ると体内の水分量を増やして血圧が上がり、むくみを生じる。カリウムを多く摂ると体内の水分量を減らして血圧が下がる、むくみが解消する、というイメージです。

実際には体内の様々な調節機能が複雑に働いているのでナトリウム・カリウムの摂った量だけで血圧が変動するわけではありませんが、少なからず影響があります。そのため「減塩」で食塩を減らすのと同じく、カリウムを積極的に摂る事も高血圧予防やむくみの改善に繋がります。

カリウムの摂取量

カリウムは摂取量の目安にしたい数値がいくつかあり、目的によって変わってきます。

・日本人の食事摂取基準(2020年版)

体内のカリウム平衡を維持するために適当と考えられる1日当たりの目安量(18歳以上)

男性:2,500㎎/日

女性:2,000㎎/日

・生活習慣病の予防を目的とした1日当たりの摂取量の目標量

男性:3,000㎎

女性:2,600㎎

・世界保健機構(WHO)が2012年に提案した高血圧予防のために望ましい摂取量(成人)

3,510㎎

日本人のカリウムの摂取量(一日一人当たり)の平均は2,299㎎(令和元年国民健康・栄養調査結果より)なので、生活習慣病・高血圧予防には少し足りません。そのため、多く摂る意識を持って過ごす事がオススメです。

「積極的に摂った方が良い」と聞くと、「じゃあサプリメントで摂ろう」と考える方もいらっしゃるかも知れません。しかし、食事から摂るのがオススメ。サプリメントは食事からのカリウムの量を把握した上で調整して取り入れられる場合には良いのですが、食事でも十分に分量が摂れていた場合は過剰に摂ってしまうリスクがあり、あまりオススメができません。

カリウム自体は様々な食材に含まれており、食品群別の摂取量をみると野菜類からの摂取が最も多く、次いで肉類、乳類、果実類、魚介類という様々な食材から摂取できます。そのため、サプリメントで摂らなくても、ちょっと工夫すればどなたでも簡単に補う事ができます。

逆に食事だけでも摂り過ぎてしまわないか、心配になる方もいらっしゃるかも知れません。カリウムは多くの食品に含まれていますが、基本的には腎機能が正常であり、サプリメントなどを使用しない限りは、過剰摂取になる危険性は低いと言われており、日本人の食事摂取基準(2020年版)においても耐容上限量(※過剰摂取により健康障害が生じるリスクを避けるために設定された上限量のこと)は設定されていません。

腎機能低下やカリウムのサプリメント摂取がない方は「食事で積極的に摂る」よう意識して過ごせば大丈夫です。

ここだけは注意

腎臓の機能が低下している場合にはカリウムの摂取量は注意が必要です。食事で摂ったカリウムの大部分は尿中に排泄されますが、腎不全などで腎機能が低下すると上手く排泄されなくなり、高カリウム血症になります。高カリウム血症になると、筋収縮が調節できなくなり、四肢のしびれ、心電図異常などの症状が現れ、重篤な場合は心停止を起こすこともあります。他にも様々な疾患と関係してカリウム制限が必要な場合もある為、定期的に受診中の疾患がある方や腎機能低下が心配な方は自己判断せず、医師に相談した上で取り入れてみて下さい。

カリウムを簡単に増やす

茨城県では野菜の生産量が多く、比較的お手頃な値段で手に入りやすいので、カリウムの一番の摂取源である野菜を増やす事は真っ先にオススメしたいこと。しかしコンビニや外食に頼る事が多く、手軽に野菜を摂りにくい方には

1)単品で手軽に摂れるもの:納豆・バナナ・玉露茶・トマトジュース・キウイがオススメです。納豆やバナナ、キウイなら買い置きして朝食に摂りやすいですし、玉露茶・トマトジュースについてはコンビニやお仕事先でも摂りやすいと思います。

玉露茶は煎茶と異なり、お茶の木自体は同じものから出来ていますが、日光の当て具合を調整し、煎茶よりも渋み成分を抑え、旨み成分が増えるよう作られています。普段、煎茶を飲んでいる方は「まずは玉露茶に変えてみる」ことから始めてみるのはいかがでしょうか?

次に取り入れやすさでオススメしたいのが、

2) 料理や外食で足しやすいもの:蒸し大豆・豆腐・とろろ昆布・芋・カボチャ・小松菜です。蒸し大豆や豆腐、とろろ昆布などはみそ汁などにちょっと加えれば手間なく足せますし、外食の方もカボチャや小松菜を使った小鉢などがあれば手軽に加えやすいと思います。

カリウムは茹でたり、水にさらしたりすることで量が減ってしまうので、ご家庭で小松菜を使う時はお浸しよりは生食でサラダにする方が効率良くカリウムを摂る事ができます。

一番のオススメは野菜摂取量を増やす事ですが、ご紹介したような手軽な食材を取り入れる事もひとつの方法です。「食塩を減らす」だけでなく、カリウムを今よりもちょっと増やして、長く健康的に過ごして頂けると嬉しいです。



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